基礎から学ぶ太陽光発電所の雑草対策(7) 雑草対策に使うその前に、
太陽光発電事業者が
知っておきたい農薬の安全性

雑草対策に利用されることもある農薬について、その安全性や関連する法制度について解説します。

自主管理用雑草対策散布キット
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太陽光発電事業者が知っておきたい農薬の安全性及びメリットとデメリット_前編

今回は雑草対策(6)「太陽光発電事業者が知っておきたい農薬の知識」より、少し掘り下げて、専門家や化学関係者向けの難しい内容をできる限りわかりやすく説明します。知識を深めることにより、皆様の理解度を深め、除草方法の選択肢を広め、より安全性が高い運営が実現できるかと思っております。今後、金融機関が事業者への融資や保険の査定に活用すると思われる、「太陽光発電事業の評価ガイド」(太陽光発電事業の評価ガイド策定委員会にて2018年6月29日制定、

同年7月18日改訂)への対応を意識しつつ、事例を踏まえてお話したいと思います。
農林水産省(主管)及び環境省(共管)で農薬取締法の改正があり、それに伴い12月1日付で省令も改正されました。省令改正の方が事業に直結し、内容が重要なことが多いです。発電事業者の方、地権者の方、監督者(電気主任技術者)、作業者に影響する内容でしたので、本文の最後にポイントをまとめて解説します。

農薬の安全性1

雑草対策(6)のQ&Aにも少しふれましたが発電所内で発生した雑草や近隣に迷惑を及ぼす害虫や菌・ウイルス類(雑草対策(1)リスクを参照)に対し、除草剤、殺虫剤、殺菌剤として使用する農作物用の薬剤が「登録されている」(農薬)のか「登録されていない」かによって、発電事業に対するリスクと管理しやすさが大きく違ってきます。
農薬取締法の中にある「登録した農薬(正確には農薬の登録制度)」は国(農林水産省)が認めた薬剤です。わかりやすく例えると「我々人等」が病気や健康維持に使用する薬剤(くすり)は「厚生労働省」が関係省庁になります。「農作物」(樹木・農林産物も含む)に使用する薬剤(=農薬)は「農林水産省」が関係省庁になり、一定の明確なルール(法規制)が用意されています。
具体的には、農薬は農薬取締業法により製造、輸入から販売そして使用(除草・防除作業等)と使用後(廃棄物)に至る全ての過程で厳しくされているため、事業運営管理において、

改正FIT法の関係法令遵守の点で管理しやすくなります。
たとえば、発電事業者にとって評価ガイドは
(http://www.jpea.gr.jp/topics/hyouka_guide.html#to_guide)、法令に遵守した運営がされているかの評価を主眼としているものなので、雑草対策の除草作業の管理項目(3.2.9~3.2.10)については「農薬取締法を遵守」とすると、管理がしやすくなり、毎年の雑草対策への運営上のお悩みが減ると考えています。
また、地権者、近隣の農家や林業などへの説明、了解、承諾も得やすくなると思われます。
よって、雑草対策に除草剤を使用する場合は除草効果と経済性だけではなく、リスク対策の観点から、農薬を使用し、農薬取締法を遵守したほうが有効だと考えています。

表にまとめるとこのようになります。

農薬取締法についてのまとめ

法律 関係省庁 目的 安全性の対象
農薬取締法 農林水産省(主管)
環境省(共管)
  • ・農業生産の安定
  • ・国民の安全
  • ・生活環境の保全
  • ・農作物
  • ・農薬使用者
  • ・動植物
  • ・水産動物
  • ・土壌及び水中等の残留性
農薬取締法内の
「農薬の登録制度」
農林水産省
※農薬販売届の提出先
は都道府県
同上 同上
農薬取締法内の
「農薬使用基準」
農林水産省
環境省
同上 同上
薬事法 厚生労働者
  • ・医薬品などの規制
  • ・医薬品などの適正利用
  • ・人
  • ・動物

農薬取締法と発電事業者のポイント

農薬取締法と発電事業者のポイント

農薬の安全性2

では、なぜ農薬が安全で管理しやすく、地権者・近隣の農家や林業の方にも説明しやすくなるか(理解が得られやすくなるのか)。その理由は、農薬自体が地権者・近隣の農家や林業の方にもなじみのあるものであること(農薬の知識が共通言語になる)と、農薬は「検査の仕組み」「検査内容」「農薬取締法の歴史」「使用者側の法規制」など4つのしっかりした裏付けがあるからです。

ではポイントを絞ってこの点をご説明します。
なお、安全性をさらに深堀りすると「ADI(Acceptable Daily Intake)」(一日摂取許容量のこと)、「NOAEL(No Observed Adverse Effect Level)」(無毒性量のこと)や「100倍の安全係数」などがありますが、用語のご紹介だけにさせていただきます。

1)農薬の検査の仕組み

この内容は、農薬の知識が少ない地権者、近隣への説明の際に役立つものと思われます。
製造者・輸入者から薬剤を農薬として登録する申請を受けた農林水産省は、独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)にその薬剤を登録して良いか否かの検査を指示し、指示を受けたFAMICが製造者・輸入者より提出された試験成績書等に基づいて総合的に検査し、農林水産省に結果を報告します。
この結果から農林水産省はその薬剤を農薬として登録するか否かを判断します。

農薬の検査の仕組み

2)検査内容

この内容は、業計画の立案と実施、地権者・近隣への説明の際に役立つものと思われます。
雑草対策(1)に記載した直接リスク(雑草が原因となって直接引き起こす損害)と間接リスク(雑草やその対策が引き起こす損害)に関して重要な内容となります。特に③安全性は近隣と環境への影響、防除作業員の安全性、残留性、毒性で問われる内容となりますので、読者のみなさまの記憶にとどめておいて欲しい内容です。

①薬効の検査
登録申請された薬剤(以下、単に薬剤とします)が雑草や病害虫の防除に確実に効くかどうか。

②薬害の検査
薬剤を使用する農作物とその周辺の農作物への害をあたえないか。

③安全性の検査
安全性については、「農薬使用者」、「農薬が使用された農作物を食べた場合の安全性」及び「散布された環境に対する安全性」に関する検査が行われています。

申請者(製造・輸入者)は信頼性のおける試験機関においていくつもの「毒性試験」・「残留試験」・「環境への影響試験」などを行います。FAMICがこの試験結果から総合的に判断し、薬剤が人や環境に与える影響について検査します。
毒性試験は短期間に大量の薬剤を摂取した場合の「急性毒性試験」と、少量であっても長期間に薬剤を摂取した場合の「慢性毒性試験」の2つがあり、防除作業者の安全性の確保と薬剤が使用された農作物を食べる人への影響、土壌・水質などになります。この点は、地権者や近隣の方に説明する際、覚えておくべき重要な内容です。

3)農薬取締法及び関係法令の歴史

この内容は、事業計画の立案と実施、地権者・近隣への説明の際に役立つものと思われます。
法令の制改訂には、社会背景が関係していることが多いです。農薬取締法及び関係法令も例外ではありません。
特殊な例を除き、いくつか我々が受けたご相談事例の中で、発電所地域で近くに農家や住民がいないのに除草剤の使用を禁止する地域に関するものがあります。こちらは、30年位前に規制が甘かった時代にその地域でトラブルが発生したため、再発防止のため現在も禁止となっている事例です。
また、発電所の事例ではないですが、土を掘り返した際、トラブルが発生したため、土壌を分析した結果、40年以上の前に使用禁止になった農薬が残留し、悪影響を及ぼした事例もあります。
このような苦い経験と二度と事故をおこさない反省を基に数々の改正がありました。改正内容のポイントを表にまとめてみました。

施行年 制定、法改正の主旨 社会背景
1948年 農薬取締法の制定 戦後の食料難
1950年 植物防疫法の制定
毒物及び劇物取締法の制定 人の影響への対応
1963年 農薬取締法の改訂内容 水産動物の被害防止のための
使用規制など
環境問題への対応
1971年 国民の健康保護、生活環境保全
の観点からの検査強化など
1983年 外国製造農薬の登録など
2002年 無登録農薬の製造・輸入・使用
の禁止など
2003年 無登録農薬の回収命令など
2006年 食品に残留する農薬等に関する
ポジティブリスト(厚生労働省)
安全性の認知と利用の拡大
2010年 公園・街路樹等病害虫・雑草
管理マニュアル(環境省)
https://www.env.go.jp/water/
dojo/noyaku/hisan_risk/
manual1_kanri.html
2018年 より効率的な農業への貢献と
安全性の一層の向上など
https://www.env.go.jp/press/
105264.html
農産物の輸出など

4)使用者側の法規制

発電事業者・電気主任技術者や我々のような防除業者が農薬を使って雑草・病害虫を防除するにあたって、法令順守すべき内容をまとめてみました。
これは、改正FITにおける各種法令順守に該当する法規制です。
なかでも、項目の「使用基準の遵守」を守っていない事例を聞きますので、おさえておきたい重要なポイントです。

項目 内容 法令
使用の禁止 登録表示のある農薬、
特定農薬以外の使用禁止
農薬取締法 11条
使用基準の遵守 使用者は使用基準を遵守する 農薬取締法 12条
 
  • ・農薬に記載されたラベル表示事項の遵守
  • ・航空機・ドローンでの使用者は使用計画書の提出帳簿の作成
  • ・住宅地等周辺での使用者は必要な事項を守るように努める
農水省・環境省
省令5号
水質汚濁性農薬の使用 水質汚濁性農薬は知事指定地域での使用を
避ける
農薬取締法 12条2
農薬(空容器含む)の廃棄 排出者の処理責任、不当な廃棄の禁止
処理委託時の管理票「マニュフェスト」の
発行など
廃掃法 12条

農薬取締法及び関係省令の改定

冒頭にお話しました法令及び省令が改定されました。良い面もありますが、事業者にとって注意すべき点もありますので、簡単な表にまとめてみました。
注意すべきなのは、インターネット等で農薬を購入する場合です。農薬を販売する者は届出が必要になりました。ホームページに農薬販売として届出が記載されている販売者から購入してください。非届出者からの購入は違法になりますので十分気をつけてください。

詳しい内容を確認したい場合は、我々のような専門家にご相談したり、農林水産省や環境省のホームページをご覧ください。内容が難しいのではないか、専門用語が分からないかもしれない、とご心配されていたり、二の足を踏まれている方もいらっしゃるかもしれませんが、わかりやすくなっていますので、ぜひ一度ご覧ください。

法令 ポイント メリット 注意すべき点
農薬取締法
  • ・国民にとって農薬の安全性の一層の向上
  • ・事業者にとって作業の安全性の向上、コスト削減効果
  • ・農薬メーカーにとって海外輸出の促進
  • ・情報の開示
  • ・安全性の向上
  • ・管理の向上
  • ・量産効果による農薬の
    価格低減
  • ・法令順守
  • ・農薬使用方法に基づく
    より適切な使用
関係省令
  • ・インターネット販売者の「販売所」として届出
  • ・ドローン等で散布する場合農薬使用計画書を提出
  • ・購入先範囲の拡大
  • ・ドローンで散布が可能
  • ・購入先の届出の有無の確認
  • ・計画書の作成と提出

私は、発電事業の雑草対策として農薬を使用するメリットは、農薬取締法に基づいた使用をすれば、それがそのまま発電事業における法令遵守につながる点だと考えています。ただし、農薬使用にあたっては注意すべきポイントがあります。

特に、次表の「使用基準の順守」は重要です。最も多いトラブル事例はここに関係していますので、ご注意して、発電所の管理に必ず加えていただきたいと思います。

使用者側の注意事項一覧

項目 内容 法令
使用の禁止 登録表示のある農薬、
特定農薬以外の使用禁止
農薬取締法 11条
使用基準の遵守 使用者は使用基準を遵守する 農薬取締法 12条
 
  • ・農薬に記載されたラベル表示事項の遵守
  • ・航空機・ドローンでの使用者は使用計画書の提出帳簿の作成
  • ・住宅地等周辺での使用者は必要な事項を守るように努める
農水省・環境省
省令5号
水質汚濁性農薬
の使用
水質汚濁性農薬は知事指定地域での使用を
避ける
農薬取締法 12条2
農薬(空容器含む)
の廃棄
排出者の処理責任、不当な廃棄の禁止
処理委託時の管理票「マニュフェスト」の
発行など
廃掃法 12条

農薬には必ず、登録番号と注意事項がラベルに記載されています。農薬を使用する前に、必ずご確認いただきたいと思います。

登録番号と注意事項

農薬のメリット・デメリットと他の工法と比較

農薬は農作物を作っている「農耕地」以外に、農作物を作らない「非農耕地」(道路、鉄道、宅地、公園、運動場、駐車場、堤とう等)にも広く使われています。草刈りや防草シートなどの方法よりも、農薬が農耕地、非農耕地に使われている理由は作業効率性、経済性が最も高く、安全性が高いからです。
また人口減により一人あたりの作業効率を上げ、作業者への負担を減らし、作業がしやすい設備配置をしないと事業運営が行き詰る恐れもでてきました。具体的には必要な通路幅が無く、作業性が悪いため太陽光発電所の草刈業務を断るシルバー人材もあちらこちらで耳にするようになってきました。
草刈や防草シートと比べると作業効率と経済性が優れ、防草シートの雨水排水計画、劣化部の補修、事業終了後の撤去及び廃棄費用の点でも、適切かつ適時に農薬を使った方が優れていると考えています。

しかし、農薬を使った雑草の防除は全てが万全であるかと私に聞かれた場合、万全ではないとお答えします。
発電事業に限って申し上げると、発電所内や近隣とのトラブルや事故が多いのは圧倒的に農薬使用者側の問題です。そして、使用者が法令違反を引き起こす理由の大半は、「表示ラベルを読まずに使用した」、「表示ラベルの内容の意味が理解されていない」などです。
事業者側は、事故=法令違反をおこしたとき、近隣だけではなく、農林水産省、環境省、都道府県に説明し、対策案と管理体制などを提示する必要があります。よって大変な労力と時間を要することになります。

農薬取締法と発電事業者のポイント

農薬取締法と発電事業者のポイント

1)農薬使用で多い事故の具体例

事故を一言でいうと、「法令違反の不適切な使用」となります。具体的には、
①散布量の超過
②散布回数の超過
③不適切な散布方法
の3つとなります。

  具体例 特記事項
散布量の
超過
散布したが枯れないのでたくさん散布した 耐薬剤雑草の場合があるので
専門家への相談は必須
濃度が高いと効果が高いと勝手に自己判断
して散布した
 
余るともったいないので使いきった  
散布回数
の超過
すぐに雑草が植生する  
同じ成分を含む複数のメーカーを使用した  
不適切な
散布方法
農薬がドリフト(飛散)し近隣の農作物に被害
を与えた
 
発電所内の地中に生えてきていた隣接する樹木
の根を除草剤の選択間違いで枯らしてしまった。
根から枯らした場合、
近隣との大きなトラブルや枯れた木の処分、
倒木による被害が想定されます。

2)農薬と他工法の比較

法令違反の不適切な使用を踏まえたうえで、工法別のメリット、デメリットをわかりやすく表にまとめてみました。

  メリット デメリット 間接リスク
草刈 簡単で一番普及
している工法
  • ・毎年費用がかかる。
  • ・草刈後処分は産業廃棄物となる。
  • ・刈払機による飛び石による太陽電池モジュールの破損がある。
  • ・ケーブルや配管の損傷がある。
  • ・作業員の安全管理に十分な注意が必要である。
  • ・茎が塊根で植生が広がる多年生雑草(※該当記事にリンク)には効果が薄い。
  • ・不快虫が近隣の洗濯物や室内に付着する。
  • ・農作物に害のある病害虫を駆除できない。
  • ・施設を壊したりするイノシシ等が食べる地中塊根を除去できない。
  • ・草刈り作業者のケガ、熱中症の発生
防草シート 高耐久性(10年)の場合、
雑草対策の費用と
管理が不要になる。
  • ・初期投資コストがかかる。
  • ・10年後に張替えが必要。
  • ・事業終了後撤去費用が必要。
  • ・雨水の排水処理計画が必要。
  • ・低耐久品の場合、2~3年で張り換えなくてならない場合がある。
  • ・不適切な防草シート
    のため草刈り費用が発生
農薬散布 作業効率と経済性が高い
病害虫などを防除できる
  • ・使えない地域がある
  • ・ドリフト(飛散防止)が必要
  • ・不適切な使用、農薬使用者の安全管理と近隣対策に十分計画を立て配慮する必要がある
  • ・農薬や散布方法などの知識が必要
  • ・除草剤の中には劇物があり、取扱い、保管に注意
  • ・不適切または選択違いな農薬の使用で土砂が流失
茎より太く多い多年生雑草クズの塊根

■茎より太く多い多年生雑草クズの塊根(生育開始から数ヶ月後の状態)
左の濃い茶色部は表土にある茎、明るい茶色が地中部にある茎です。
翌年にこの塊根から発芽し、爆発的に植生範囲が拡大します。

今回は、農薬を実際に使用する際にご注意いただきたい事項をご説明しました。便利で簡単かつ経済性のある農薬が、使用の仕方によっては、被害、事故、損害補償を引き起こす可能性があることがご理解できたかと考えております。
発電事業者の方や管理する方は、この点を踏まえて

事業計画や評価ガイドに対し適切に計画・実行・管理していけば、すばらしい発電所運営になると考えています。
雑草対策(8)は発電事業者がおさえておくべき安全管理と弊社の取り組み事例をご紹介する予定です。ぜひ、お楽しみにしてください。