基礎から学ぶ太陽光発電所の雑草対策(1) 急増する太陽光発電の
「雑草トラブル」、
知っておきたいリスクと対策

太陽光発電の雑草対策を手掛ける弊社が知っておくべき雑草に関する基礎知識や対策方法を解説します。

雑草に埋もれる太陽光発電所
雑草に埋もれる太陽光発電所

運転開始後の状況と私の所感

野原ホールディングス株式会社 事業開発部 再生可能エネルギープロジェクト(以下野原HD再エネPJ)では野原グループが持つ土木・建築の専門技術とノウハウ、建設関連に特化した商社機能におけるネットワーク、調達力を駆使して太陽光発電所の事業計画支援、コンサルティング、調査・検査・非破壊検査、O&Mサービス、標識製造販売、発電事業管理システムなどを開発し、サービスを提供しています。

弊社が手掛ける中で好評なサービスのひとつが、「雑草対策」です。発電事業者様、O&M企業様、EPC様から直接お問合せやセミナーなどを通じて、数多くの雑草対策、雑草による1次被害(発電事業への阻害)及び2次被害(近隣への被害)対策、土砂流失対策、法面崩落対策等のご相談をうけています。運転開始後3年以上経過した発電所での雑草による問題に対してのご質問や、読者の方が共感いただけると思えるご質問のBest10は次の通りです。

<ご質問Best10>

①草刈り回数が増えて予算オーバーになっている。

②年々雑草が増え、発電量への悪影響が増えている。

③地域から景観が悪いと苦情がでている。

④防草シートを敷いたが、数ヶ月で多くの雑草が生え、効果がない、景観が悪い。

⑤除草剤を撒いて、全てを枯らしてしまい、土砂が流失してしまった。

⑥草刈機でケーブルを切断・バックシートを傷つけて事故をおこした。

⑦アブラムシが大量発生し、近隣の農家や住宅地から苦情があった。

⑧イノシシの糞臭で、稲作がだめになったので買い取ってほしい。

⑨種子吹き付けなどの緑化対策をしたが失敗した。

⑩大麻や芥子(ケシ)が植生してしまった。どうしたらよいか。

発電所ごとに全て状況が違い、複数の発電所を所有している方にとって、最も想定外なのが雑草対策で、とても厄介な状況に陥って頭を悩ませているのが現状です。
ひとくくりに雑草と言っても、多種多様の種類があり、北は北海道から南は沖縄までと南北に長い国土のため、植生分布や生育時期も大きく異なります。
また、地域、地点による降雨量、地・土質(粘土、砂質、PHなど)、平均気温の違いも、植生の発生、生育に大きな影響を及ぼします。
防草対策をおこなっている大手防除業者が一番困るお問合せは写真や状況説明も何もなく「雑草をコストかけず、何とかしてほしい」といった内容です。わかりやすく病気に例えるとお医者さんに「私は病気なので、経済的負担なく、なおして欲しい」と言っているような感じです。
「どのような病気の症状なのか=どのような植生なのか」、「どのような症状(痛い、痒い等)なのか=どのような状況なのか(例えば雑草が1mを超えた、フェンス一面にこの雑草が植生している)」などの情報を正しく伝えていただけないと、無駄な時間や費用がかかるだけでなく、適切な対策をたてられません。この結果、不適切で非経済的な工法や作業のため、発電事業と業者とのトラブル発生は絶え間なく続いています。
その理由として雑草はその場所に植生している数々の草の一群を指しているからです。一群に植生している草にはひとつひとつの名前・学術名があり、それぞれ特徴があります。草ではなく、樹木の苗、竹、笹の場合もあります。また植生により発生する害虫(人・作物・樹木)や病気も大きく違ってきます。でも、発電事業者の方は我々のように専門家になる必要はあまり無いと思います。

しかし、雑草対策の基本知識習得やご理解が深まると、我々のような業者に対し、相互理解が深まります。この結果、適切でより効率的な対策により、さらに進化し、安全・安心な発電事業運営や農家や住民など近隣の方との良好な関係が築けるかと考えています。
さらに高齢化、人口削減による人材不足による荒廃する里山、増大する耕作放棄地などへの対策に役立てればありがたく思っています。私自身、山や海によくでかけますので、荒廃した自然環境を見ると残念な気持ちになります。
野原HD再エネPJの雑草対策の目標は、「雑草=太陽光発電所運営を阻害するやっかいな存在」ではなく、植生によってはより有益な場合があるので「雑草=太陽光発電所運営を支援するもの=有益な存在」にすることです。
また弊社が対策を立案する場合、必ず植生が存在している時期に(5月~9月頃)現地調査をおこないます。「植生(草種)だけを見るのではなく、「土」「周辺の環境・植生」を確認した上で、現状分析だけでなく、今後の予測も検討します。
この結果に基づいていくつかの工法、作業にまとめます。事業主様に効果、コスト、デメリットなどを記載した提案書をご提示し、ご納得いただいた上でご契約を頂いています。
特にコストとデメリットについては単に雑草対策ではなく、基礎、架台、太陽電池モジュール、フェンス、パワコン、キュービクルへ影響などのメリット、デメリットや土砂流失、近隣への配慮についてもきちんとご説明をしています。
雑草対策(2)では雑草の影が太陽電池モジュールに投影による発電量低下だけでなく、雑草が起因とするリスクについてお話する予定です。

よく見かける雑草の影による悪影響
よく見かける雑草の影による悪影響
架台に生息しはじめたスズメバチの巣
架台に生息しはじめたスズメバチの巣
雑草対策セミナー
雑草対策セミナー

雑草によるリスク(動植物被害含む)と近隣・地域トラブルの状況

フェンス一面を覆った雑草
フェンス一面を覆った雑草

私共にご相談される方は雑草が原因で何らかのトラブルを経験されています。そのご相談内容は多種多様で、想定外のことや想定以上(経済性、管理)のことが発生しています。
私がご相談された方に発電所管理のポイントを説明する際、「一言で言うと、発電所の管理は農地の管理ととても似ています」と申し上げています。

雑草だけでなく、風雨・動植物による被害も発生するからです。
ご質問Best10のうち、雑草によるリスクと近隣・地域トラブルに絞って、読者の方に共感いただけると思われる事例を以下に記載します。

お問合せ事例

①雑草影による発電量低下(No1)

②草刈費用が年々上がる(No2)

③近隣からの景観苦情(No3)

④動植物による施設の破損

⑤近隣農家からの苦情

⑥フェンス倒壊、傾き

⑦不法植物の発生

弊社では雑草対策を実施する前に、必ず、現地調査を行います。現地調査では、発電所内の植生だけでなく、近隣・地域の状態や環境を必ず観察・調査します。
以下では、実際に行った現地調査の内容も踏まえて、雑草によるリスク(被害や苦情)と近隣・地域トラブルについてお話しします。

私の経験上、リスク(被害や苦情)を整理すると、雑草により発電事業(1次被害)や近隣(2次被害)に対し直接的にリスクを受けたり与えたりする場合と、雑草が発生元で発電事業及び近隣に対し間接的にリスクを受けたり与えたりする場合に分類することができます。

わかりやすく、以下の表としてみました。

分類表

  1次リスク(被害)(発電事業) 2次リスク(被害)(近隣・地域)
直接
  • ・発電量が低下した。
  • ・草刈費が年々増大する。
  • ・大麻などの不法植物が植生した。
  • ・特定外来種等が植生した。
  • ・フィルター詰まりが増大した。
  • ・敷地の雑草が隣接の農家や道路まで進入した。
  • ・雑草の種が飛んできた。
  • ・景観が悪いと指摘があった。(無管理な発電所と思われている)
間接
  • ・草刈機でケーブルを切断してしまった。
  • ・草刈機でアレイを傷つけた。
  • ・害虫が大量に発生した。
  • ・動物がすみつき、施設に被害が発生した。
  • ・不適切な防草シートのため草刈費用が追加発生した。
  • ・フェンスが倒壊、傾いた。
  • ・不適切な除草剤散布が原因で土砂が流出した。
  • ・作業員が、へび、蜂の危害に遭った。
  • ・草刈業者が怪我をした。
  • ・発電所内で生息する害虫・動物が作物にとりつき被害がでた。
  • ・不適切な除草剤散布で作物に被害がでた
  • ・不快虫が近隣の洗濯物や室内に付着した。
  • ・不適切な草刈、除草剤散布により土砂が流出した。

上記のリスクの中で事業者にとっての要注意項目は間接リスクです、「間接1次リスク」「間接2次リスク」は、リスクが顕在化せず、目に見えない形が多いためです。

顕在化したときには、被害が拡大したため手がつけられない状態(リスクの玉突き被害)になっている場合があるからです。

関節リスクの概念

間接1次被害の事例として、以下の2つを上げます。

事例1・草刈機によるケーブル切断、ケーブルダクトの破損被害
最近では1000V、1500V等高圧仕様が増えているため、影による発電量低下の悪影響(直接リスク)だけでなく、草刈作業者の感電事故や短絡が原因の火災が懸念されます。金属管やコンクリート2次製品などでケーブルなどを保護されていれば発生しにくいですが、発電所では樹脂製ダクトが多く使用されていること、さらに雑草でケーブル、ケーブルダクトが埋没して全く見えない状態になっていることが原因です。
発電事業者の労働安全衛生管理は重要な管理項目なので、委託業者任せの管理だけでなく、発電事業者自身による安全と衛生の管理と対策が求められます。人身や火災の事故予防対策や発生時対応は、重要なリスクになります。

事例2・フェンスの倒壊、傾き被害
フェンス一面に雑草が植生したため、フェンスの風通しが悪くなり、強風によりフェンスが倒壊または破損、傾くなどの被害が発生した。
雑草対策でよく問合せがある内容の一つです。

間接2次と連鎖被害(玉突き被害)の事例は動植物の繁殖・植生リスクです。2つほど事例を挙げます。

事例1・イノシシ繁殖地化による田んぼ、発電所への玉突き被害
フェンスが低く、雑草管理が不適切だったため、アレイ下がイノシシの繁殖場所となった。発電所内をあちらこちらで掘りおこしや(恐らく捕食のため)パネルの上をのったため破損被害が発生した。さらに近隣の田んぼを荒し、糞尿をしたため、作物に異臭が残り出荷できず、損害請求があった。

いのししの糞
いのししの糞

事例2・生活不快虫、病害虫の発生
雑草に発生した害虫、特定外来種、病気が原因で近隣の農作物、樹木に被害が発生し、損害請求があった。土地賃借契約に「除草剤など農薬・薬剤を使用しない」内容となっているため対処ができなかった。
近年、このような「除草剤などの農薬・薬剤を一切使用してはならない」旨の契約を見かけるようになりました。
このような契約では、昨年大きな社会問題になった外来種の「ヒアリ」、数年前から問題が続いている「セアカケグモ」や都道府県から発令されている「病害虫発生状況(注意報・警報等)」への対応・駆除ができません。労力はかかるかもしれませんが、契約の見直しが必要と感じています。
また、雑草管理されていない発電所では「ダニ」「マダニ」「アブラムシ」「カメムシ」「蛾(ガ)」など生活不快虫や農作物に悪影響を及ぼす虫が大量に発生する事案をよく見かけられますので、要注意です。

カメムシ
カメムシ
アブラムシ
アブラムシ