基礎から学ぶ太陽光発電所の雑草対策(4) 雑草対策の失敗を防ぐ
「太陽光発電所版IPM」とは何か?

適切な雑草対策を行うために有効な「太陽光発電所版IPM」という考え方について解説します。

太陽光発電所版IPM概念図

雑草対策(3)では、「費用をかけたのに効果なし、実は失敗が多い太陽光発電の雑草対策工法」として、トラブルが多い「緑化工法」、広く普及している「防草シート」と「草刈作業」の注意点を解説しました。
今回は雑草対策(2)「太陽光発電のトラブルにつながる雑草、知っておきたい代表種」と雑草対策(3)の「草刈作業」のリスクを踏まえ、経済性、実務と安全性を考慮しつつ、雑草の種類や植生の状況に合った「最適な雑草対策工法」と「最適な防除方法のポイント」についてご説明します。なお、稼動運転中の太陽光発電所への対応を念頭とさせていただきます。

最適な雑草対策のために~太陽光発電所版IPMという考え方

私がおすすめする考え方は、国連食糧農業機関(FAO)の「IPM(Integrated Pest Management)」=総合的病害虫・雑草管理(農林水産省
http://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/gaicyu/g_ipm/)と環境省の「公園・街路樹等病害虫・雑草管理マニュアル」
(https://www.env.go.jp/water/dojo/noyaku/hisan_risk/manual1_kanri.html)を基本に、太陽光発電所の運営に適した雑草対策を組合わせる方法です。私は、これを「太陽光発電所版IPM」として提唱しています。

1.太陽光発電所版IPM

国連食糧農業機関(FAO)の定義するIPMをもとに、太陽光発電所版IPMを定義すると、「すべての用いることが可能な防除技術を十分に検討し、それに基づき、病害虫の密度の増加と発生を防ぎつつ農薬その他防除資材(防草シート、砕石等)の使用量を経済的に正当化できる水準に抑え、かつ人及び環境へのリスクを減少しまたは最小とするよう、適切な防除手法を組み合わせること」です。
具体的には、次の4ステージのサイクルから太陽光発電所版IPMを実践していきます。

①リスクの洗い出しと予想をおこなう「調査」

②防除の要否及び実施時期を決める「判断」

③適切な対策をおこなう「防除」

④適切な防除後の検証と次年度以降の対策を決める「予防」

太陽光発電所版IPM

特に、「調査」「判断」は重要です。「防除」を実施するための判断基準になるからです。次に重要なのは「予防」です。効果の検証だけでなく、新たなリスクへ対応準備につながります。そして、「調査」・「判断」・「予防」が整って初めて、具体的に実行する「防除」につながります。

2.雑草対策の現状

日頃、私がよくお問い合わせをいただくのは、「調査」・「判断」・「予防」ステージの情報が全くない状態での【防除】雑草対策に関するものです。
具体的なお問合せ事例の一部を以下にあげますが、事後の対処法やどうすることもできないことを求められる場合が多いのが実情です。

・「この雑草に効果のある除草剤は?」

・「草刈り業者に注意するように言ったのにケーブルを切断した。パネルを割った。」

・「除草剤が効かない。どうしたらよいか」

・「各業者の防草シート提案書をよく確認せず、一番安い業者を頼んで失敗した。効果の無い商品をすすめた業者が悪いので何とかする方法を教えて欲しい」

・「作業員が草刈中に熱中症で倒れたため、除草剤に切り替えたいので散布方法を教えてほしい」

残念ながら、今後発生するリスクに対し根本的な問題解決のための、「調査」「判断」「予防」まで検討されていないのが現状です。もう少し早く検討しておけば、このようなトラブルが発生しなかったように思える事例が多いのが実情です。太陽光発電所版IPMの「調査」「判断」「予防」が整っていないために、雑草対策に無駄な費用と時間が発生し、結果として太陽光発電事業の運営費や近隣に悪影響を及ぼしている状況が残念でなりません。

太陽光発電所版IPM「調査」・「判断」・「予防」の必要性の具体的例

先ほどのお問合せ内容を具体例に、太陽光発電所版IPMの「調査」「判断」「予防」のいずれが必要か、そして、その際に検討すべき具体的内容をまとめてみました。早めに検討することや、失敗から学ぶことの重要性がご理解いただけるかと思っています。
「予防」:防除後の検証とリスクが発生しにくい環境の整備(次年度以降の対策)
「調査」:リスクの洗い出しと予想
「判断」:防除要否及び実施時期の決定
「防除」:適切な雑草対策(多様な施工・作業)の実施

防除に関するお問合せ内容 必要ステージ 検討・対策案
予防 調査 判断
【発電事業/直接リスク】
この雑草に効果のある除草剤は?  
  • ・植生種類の確認
  • ・土壌の確認
  • ・植生場所と近隣の確認
除草剤が効かない。
どうしたらよいか?
 
  • ・除草剤の薬剤名、成分の確認
  • ・適切な散布方法だったのかを確認(使用方法の間違い)
  • ・植生の確認(耐薬剤性)
  • ・他の除草剤、工法の検討
各業者の防草シート提案書をよく確認せず、
一番安い業者を頼んで失敗した。
効果の無い商品をすすめた業者が悪い。
何とかする方法を教えて欲しい。
(発電事業/直接リスク)
  • ・効果がなかった植生種類の確認
  • ・防草シートの内容と工法の確認
  • ・費用対効果の検証
  • ・他の防草シートと対策の比較検討
【発電事業/間接リスク】
草刈り業者に注意するように言ったのに
ケーブルを切断した。パネルを割った。
   
  • ・作業前のKY(危険予知)活動の実施依頼
  • ・飛び石対策刈払い機の導入やルールの制定
  • ・樹脂ダクトへの保護材の施工
  • ・注意警告マーク等の設置
作業員が草刈中に熱中症で倒れたため、
除草剤に切り替えたいので散布方法を
教えてほしい。
 
  • ・KY(危険予知)活動の実施
  • ・農薬散布への有資格、認定者の確保
  • ・植生種類の確認
  • ・土壌の確認
  • ・植生場所と近隣の確認
【近隣・地域/間接リスク】
除草剤を散布したら、
周辺作物に被害がでてしまい苦情がきた。
  • ・風速管理から実施時期の判断
  • ・作業手順の確認
【発電事業及び近隣・地域/間接リスク】
除草剤を使用後、雑草が生えなくなり、
雨天時の土砂流出が心配だ。
 
  • ・除草剤の薬剤名の確認
  • ・土壌調査(酸性・アルカリ性)
  • ・適切な散布方法だったのかを確認(使用方法の間違い)
  • ・植生と近隣の確認・調査
  • ・他の除草剤、工法の検討
土砂流出の様子
土砂流出の様子