雑草対策(3)では太陽光発電所の雑草対策として行われているさまざまな工法の中で、トラブルにつながりやすい、問題の多い工法について解説します。
太陽光発電所の建設を計画するに当たり、雑草対策としてさまざまな工法を検討し、施工や実施をされた例もあるかと思われます。しかし、実際には当初の計画通りに進まず、発電所内が芳しくない状況になってしまっている―といった相談をうけるケースも多くあります。
今回は、そのような代表的な工法を2つと、発電所の雑草対策として一番多く行われている草刈作業の注意点について説明します。
緑化工法(クローバーによって緑化し、非管理を目指す工法)
環境対策、土砂流出、雑草防止のために、クローバー(シロツメグサ)の播種※(3種混合)を行っている例をよくみかけます。しかし、種まき後に適切な管理を行わないと、2~3年のうちにクローバーの生存率が1%以下になってしまう場合があります。
※播種(はしゅ)=種まきのこと
私自信も、クローバーがほぼ死滅し、カヤなどの問題発生が多い他の雑草に植生転換してしまった発電所に何度も遭遇しています。
クローバーが死滅する理由は、その特性にあります。クローバーはマメ科植物で、根粒菌を持っています。根粒菌とは植物の生育を促す土壌内のバクテリアで、各固体の生育範囲を広げてコロニー(ひとまとまりの植物の群落)を作ります。しかし、このコロニーは上限に達した場合、自滅の方向に向かってしまうのです。すると、自滅した空白の場所に他の植物群が入り込み、さらにクローバーを駆逐してしまう悪循環におちいると、多種な草種が存在する植生に転換してしまいます。
クローバーの播種費用は廉価なため、一見導入しやすい工法に見えます。しかし、長期的に効果を維持するには、播種後に適切な管理を行う必要があり、それには豊富な経験やノウハウが必要です。
そうした管理・維持の費用がかけられないという場合は、あまりおすすめができません。
防草シートを導入したのに雑草が発生
もう1つ、雑草対策としてよく行われるのが、太陽光を遮断して雑草の生育を防ぐ防草シートの導入です。しかし、せっかく費用をかけて防草シートを施工したにもかかわらず、施工したその年から雑草が発生している事例を多く見受けます。その理由は「施工不良」と「材料選定ミス」の2つが大半だと考えられます。
より具体的に説明すると施工不良とは、
1.雑草の除去不足、2.突起物除去などの整地不足、3.メーカーの施工要領書、推奨施工に従っていないなどがあります。
材料選定ミスとは、耐候性の無い防草シートや薄く強度が無い防草シートを選択したために、数年で張り替えなければならなくなる場合です。薄く強度のない防草シートでは、カヤがシートを突き破ってしまうことがあります。
防草シートの張り替えや補修作業は大変手間と費用がかかります。野原グループが施工する場合、必ず現地調査を行い、現場の詳細な情報を把握した上で最適な工法を決定します。発電事業者の方が、我々のように専門家になる必要はあまりないと考えますが、
費用だけで選ばず、ご自身の発電事業所の現場環境をある程度理解した上で、防草シート施工の最適な費用対効果を事前に検証することが重要です。
草刈の注意点
草刈作業には、手での草むしり、草刈り鎌や草刈り機などの道具を使用する場合、除草剤を散布する場合などありますが、意外と注意点が多く、以下の表にまとめてみました。
草刈作業のリスク分類
発電事業 | 近隣・地域 | |
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直接リスク |
【集草・廃棄処理の場所確保と費用捻出】
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間接リスク |
【設備への危害】
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【除草後の草処理】
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草刈作業は、皆様が思われているよりも関連費用がかさむ場合が多いです。また、発電設備および作業員の安全管理にも注意する必要があります。特に、安全管理は太陽光発電事業で最重要項目だと考えていますので、ご確認と実行をお願いします。