基礎から学ぶ太陽光発電所の雑草対策(2) 太陽光発電の
トラブルにつながる雑草、
知っておきたい代表種

太陽光発電に対し、さまざまなリスクやトラブルの原因となる雑草を、種類別に解説します。

雑草対策(1)は、雑草が現在の太陽光発電所に与えている影響やリスクについてご説明しました。今回は内容を絞り、雑草に関する知識を掘り下げつつ、より皆さまのご理解が深まるよう、専門用語や業界用語をわかりやすいような表現に置き換えるよう心がけていきます。
なお、今回取り上げる雑草は、雑草対策(1)の「雑草に起因するリスクの分類表」の内容と関連性が高い草種を選びました。

問題発生が多い雑草等

私のところに必ずと言っていいほどの割合でご相談を寄せられる、または「これはどのような雑草でしょうか」と写真付きでお問い合わせいただく雑草等があります。ここでは、発電事業運営に悪影響(直接リスク)を及ぼす恐れのある代表的な3つの草種と雑草外1つに絞り、具体名を用いて詳細な内容とリスクをご説明します。

リスク分類については雑草対策(1)をご覧ください。
なお、日本は南北に長いため、地域により植生が大きく異なりますので、「我々の地域には植生していない草種だなあ・・・」と感じる方がいらっしゃるかと思われますが、発電所の点検業務中での経験とお問い合わせやご相談の中から選んでいることをご了承願います。

①セイタカアワダチソウ(セイタカアキノキリンソウ)

法面に植生するセイタカアワダチソウ
法面に植生するセイタカアワダチソウ

【分類】キク科(広葉) 多年生植物 茎長1~2.5m 北アメリカ原産
【国内分布】ほぼ全国に分布しており、河川敷、荒地、路傍、土手など、ありとあらゆる箇所で発生しています。
【太陽光発電所ならではの特記事項】重点外来種(環境省)です。私が現地調査したとき、必ず見かける草種です。
【トラブル事例】
▼発電事業/直接リスク
茎長が長いため、太陽電池モジュールに影を落としています。その結果、発電量低下とホットスポット発生の原因になっています。太陽電池モジュール間の隙間から、植生しているのがよく見かけられます。
▼近隣・地域/直接リスク
種子が近隣に拡散し、近隣に迷惑をかけることがあります。また、農業や緑化に悪影響を及ぼすため、非常に苦情が多く、近隣関係を良好に保つための注意と努力が必要です。
▼近隣・地域/間接リスク
環境省が定める重点外来種のため、除去後の処理も要注意です。

②カヤ(茅、萱) 【分類】イネ科 多年生植物 茎長1~3m 日本固有
【国内分布】帰化などがあり、ほぼ全国に分布しており、日本ではとても馴染みのある草種です。古くは家屋の屋根材として使用されていました。
【太陽光発電所ならではの特記事項】カヤには多くの種があり、ススキ、チガヤ、カモガヤなどはその一種になります。
また、地下茎があるため草刈をしても枯れることなく、茎がすぐに伸びてしまうため年に何度も草刈が必要な場合が多いです。
【トラブル事例】
▼発電事業/直接リスク
茎長が長く成長が早いため、太陽電池モジュールに影を落し、発電量低下とホットスポット発生の原因になります。
また、年々総量が増えていく傾向が強いため、毎年、草刈及び廃棄費用が増大している場合が多く見受けらます。
▼近隣・地域/直接リスク
種子が近隣に拡散し、近隣に迷惑をかけることがあります。また、農業や緑化に悪影響を及ぼすため、非常に苦情が多く、近隣関係を良好に保つための注意と努力が必要です。

③クズ

フェンス一面を覆ったクズ
フェンス一面を覆ったクズ

【分類】マメ科 多年生植物 茎長10m以上 日本固有
【国内分布】全国に分布しています。地面に這うツル性植物で、他のものに巻きついて伸びます。地中には長芋の塊根となり、古くからクズ(葛)料理の材料として利用されてきました。
【太陽光発電所ならではの特記事項】
よく「ツル」という名前でご相談が多い草種です。発電所ではフェンスや電柱に巻きついているのが見受けられます。フェンスから伸びたクズがアレイに巻きつき、太陽電池モジュールを覆っている事例もあります。クズは多年生植物ですので、秋以降に枯れますが、翌年には地中に残った塊根より生育がはじまり、前年以上に植生範囲が増えます。
さらに伸びた茎が地面と触れたところで根をだすことにより植生範囲を広げて、茎は木質化し、フェンスに2~3年で覆いつくしているのがよく見受けられます。
よって、防除作業に費用がかかり、敷地外にも拡大して植生するため、発電事業者の方が対策に悩んでいる草種です。
【トラブル事例】
▼発電事業/間接リスク
フェンス全面に覆ったクズが原因で、フェンスの風通しが悪くなり、台風、強風時にフェンスが傾いたり、倒壊した事例が多く見受けられます。
▼近隣・地域/間接リスク
フェンスから伸びたクズが隣の敷地の植木、植物を覆い、光合成を阻害するため、枯らしたりする苦情があります。
また、倒壊したフェンスが通行を妨げたり、他の敷地の構造物に危害を加える可能性もあります。

④雑草外(竹など)

竹を防除中
竹を防除中

雑草とは違いますが、ご相談が多いのが「竹(孟宗竹、真竹、淡竹他)」です。
【国内分布】全国に分布しています。
【太陽光発電所ならではの特記事項】具体的な相談内容としては、隣の敷地(竹林)から地下茎を通じて進入し、発電所で竹が伸びてきたため対策をおこないたいが、「近隣とトラブルをおこさない対処方法がわからない」といった内容です。
【トラブル事例】
▼発電事業/直接リスク
太陽電池モジュールに影を落し、発電量低下とホットスポット発生の原因になります。私は見たことがありませんが、太陽電池モジュールを突き破った事例を聞いたことがあります。
▼近隣・地域/直接リスク
不適切な伐採や風水害によって倒れた竹が、隣接する構造物に被害を与える場合があります。また、不適切な防除方法で隣接地の竹まで枯らしてしまうこともあります。

以上が、問題発生が多い雑草等の説明です。太陽光発電事業において注意すべき代表的な草種とリスクを整理するため、下表にまとめてみました。

  発電事業 近隣・地域
直接リスク 【セイタカアワダチソウ】
  • ・太陽電池モジュールに影を落とし、発電量低下とホットスポット発生の原因になる。
【カヤ(茅、萱)】
  • ・太陽電池モジュールに影を落とし、発電量低下とホットスポット発生の原因になる。
  • ・年々総量が増えていく傾向が強いため、毎年、草刈及び廃棄費用が増大する。
【雑草外(竹など)】
  • ・太陽電池モジュールに影を落とし、発電量低下とホットスポット発生の原因になる。
【セイタカアワダチソウ】【カヤ】
  • ・種子が近隣に拡散し、近隣に迷惑をかける。農業や緑化に悪影響を及ぼすため、非常に苦情が多く、近隣関係を良好に保つための注意と努力が必要になる。
【雑草外(竹)】
  • ・不適切な伐採や風水害によって倒れた竹が、隣接する構造物に被害を与える。
  • ・不適切な防除方法で隣接地の竹まで枯らしてしまう。
間接リスク 【クズ】
  • ・フェンス全面に覆ったクズが原因で、フェンスの風通しが悪くなり、台風や強風時にフェンスが傾いたり、倒壊する。
【セイタカアワダチソウ】
  • ・環境省が定める重点外来種のため、除去後の処理も要注意。
【クズ】
  • ・フェンスから伸びたクズが隣の敷地の植木、植物を覆い、光合成を阻害するため、近隣の作物を枯らし苦情の元となる。
  • ・倒壊したフェンスが通行を妨げたり、他の敷地の構造物に危害を加える可能性がある。

雑草の区分~生育期間と発芽時期~

ご自身の太陽光発電所に生育している雑草が、どういった種類のものでどのような特徴があるのかを正しく把握するため、生育期間と発芽時期について理解を深めたいと思います。
まず、多種多様な植物を区分することは困難なことですが、

あえて一般の方がわかりやすいように努めつつ、我々のような防除防疫業者との意思疎通が図りやすくなることを念頭に置き、大きく2つの観点から雑草を分類してみます。

1)雑草(植物)の区分 ①生育期間による分類

  • 一年生植物:1年で世代を終える植物、春に発芽し、夏頃に開花、結実して枯死します。
  • 越年生植物:秋に発芽し、翌春頃に開花、結実して枯死します。
  • 多年生植物:冬や夏に地上部が枯れた場合でも,地下部の茎が生存し,その後の好適な条件で萌芽・再生します。
    繁殖特性から単立型,地表ほふく型,地下拡大型に分けられ、複数年にわたって生存します。
    なお、発電所で問題になるのはこの種類が多いです。

②葉の形状による分類
雑草を分類する中で、よく使われる言葉として「イネ科」と「広葉」表現する方法がよく使用されています。両方とも一年、越年、多年生植物が存在しています。

イネ科 広葉
青丸:イネ科植物  赤丸:広葉植物
青丸:イネ科植物  赤丸:広葉植物

2)発芽の条件・時期と生育期間

発芽の条件

雑草が発芽・生育するには、3つの条件「光」「水」「温度」が合致する必要があります。
どれ一つが欠けても生育はしません。また、発芽時期は、日本は南北に長い国土のため、地域や雑草の種類によって大きくことなりますが、一般的に平均発芽気温は17℃位といわれています。
南部の温暖な地域では3月中旬から下旬、北部の寒冷地は5月頃に発芽がはじまるといわれています。

しかし、近年温暖化の影響で発芽の時期が早まっており、今年は3月中旬ころの急激な気温上昇の影響なのか、例年より早いように思われます。
最後に、わかりやすく雑草の生育期間を下表にまとめてみました。表に記載したとおり、発電所で問題になることの多い多年生雑草は、秋には地表部は枯れてしまいますが、地下茎は枯れず休眠状態になっているのがおわかりになると思われます。

生育期間

雑草の理解を深めるための今回の内容は、私が何も知らなかった時期を振り返り、わかりやすく皆様にお伝えしたいと考えてまとめてみました。問題の多い雑草を3つに絞るには大変苦労し、レアケースや直接リスクが無い場合や、少ないけれども間接リスクが懸念される植物もありましたが敢えて省略しています。